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ある入院患者さんのお話・・

Aさんは約1年半の間、当院に入院されていました。正直、もう自宅に退院するのは難しいんじゃないか…と思ってしまうくらい、長い入院生活です。

入院当初は体調が悪くほとんど寝たきりでした。体力は落ちるし、腰は痛いし…。

もともと体格のよかったA様は膝や股関節の痛みもあり、その上、酸素チューブや尿カテーテルに繋がれて、寝返りをうつのにも一苦労といった状態でした。気持ちの面でも不安定で、認知症の症状も少しありました。

そんなAさんはリハビリを開始した当初から一貫して同じ目標・願いがありました。それは、『もう一度自分で歩いてトイレに行きたい』、『洗面台で、流水で手を洗いたい』。

普通に生活している人からみれば気にもとめない当然のことですが、入院患者様の多くはこういった願いをリハビリで叶えようと頑張っています。

Aさんはとても努力家でした。寝返りもうてないような腰痛があっても、股関節や膝が痛くて足が曲げられなくても、自分で出来る範囲で力を入れて運動していました。自力でベッドに座れるようになってからは、計算問題や 間違い探しの宿題プリントに取り組んで昼間はなるべく起きて過ごし、リハビリでやった体操を覚えて、こっそり自主トレーニングもしていたようです。およそ半年で立ち上がれるようになったAさんは、その後1年かけて少しずつ歩く練習をしていきました。平行棒、歩行器、シルバーカー…つかまるものを少しずつ小さいものにして難易度を上げていき、足の筋力や体幹バランス、体力を向上させていきました。Aさんもベッドサイドでひとり黙々と起立の自主トレーニングを頑張り、体重も大幅に減りました!歩行が安定すると、ついに病棟のトイレを使ってみよう!ということになり、看護師・介護士の協力のもと、おむつと尿カテーテル、おまけに酸素チューブからも卒業!自分で歩いてトイレへ行って用を足し、水道で手を洗う。入院当初からの願いが叶い、Aさんもだいぶ自信がついたようでした。以前見られていた認知症の症状もすっかりなくなっていました。そしてご家族の協力のもと、入院中に2回自宅へ試験外泊を実施し、家での生活で問題がないか最終確認をして、めでたく自宅退院!長い長い入院生活から遂に卒業!今後は、デイケア・デイサービスを利用しながら自宅で生活していくことになりました。 今回のAさんの症例を経験して感じたのは、重い病気を患っても、高齢であっても、太っていても、『もう一度自分で歩いてトイレに行きたい』…など、強い願いがあれば、人はちゃんとそれに向かって回復していけるんだ、ということでした。 Aさんの屈強な回復力、病棟で毎日Aさんのケアをしてきた医師・看護師・介護士、一緒にあちこち歩き回って運動してきたリハビリスタッフ、いつも一番Aさんを心配していたご家族の皆様。Aさんを中心にみんなが協力し、Aさんの願いを繋いでくださったことで、今回の自宅退院という嬉しい結果につながったと思います。こんな時、あぁ…リハビリの仕事しててよかったなぁ~って思います。私自身も、たくさんの元気や勇気をもらいました。Aさん、これからも元気で長生きしてくださいね!いつまでも応援してます!

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