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心に寄り添うリハビリテーション

60代女性、脳出血で入院された患者様です。右片麻痺がありADLは全介助、重度の失語症がありコミュニケーションも困難な状況でした。臥床時も常にベッド柵を握りしめ、身体は緊張が強く、いつも苦痛そうな表情をされていました。

言語療法士によるリハビリでは、失語症に対してのコミュニケーション訓練と、”お看取り”の方針での入院でしたが、60代と若く嚥下機能も比較的保たれていたため、嚥下訓練を行うことになりました。しかしご本人の拒否が続き、食事がご本人にとって不快な刺激になっている様子が伺えました。

そのような中で、苦痛な表情をしている時間をどうすれば減らせるか、少しでも楽に過ごしていただくにはどうしたらいいのか、と考えるようになりました。まずは信頼してもらえるような関係作りを目指し、コミュニケーションやリラクゼーションを中心に介入することにしました。

結果的には食事を食べることも、ことばでのやりとりも困難な状況に変わりありません。しかし、理学療法士によるリハビリで安楽な姿勢がとれるようになったこともあり入院時のような緊張状態が軽減し、スタッフが挨拶に伺うと微笑んでくたり、動かしにくい口元に動きがみられるなど表情に変化がみられるようになりました。病棟でも看護師のケア時に拒否的な様子が減ったとの話も聞かれるようになりました。

結果的に機能やADLが改善した症例ではありませんでした。しかし心に寄り添おうとしたことで、ちょっとだけ”楽に”なっていただけたような気がしました。

当院は療養型病院で、全ての方が回復して退院するわけではありません。当院で最期の時間を迎える患者様も多くいらっしゃいます。時に、体の機能の回復が全てではなく、心に寄り添うこともとても大切なリハビリだと改めて実感する良い機会となりました。

心に寄り添うリハビリテーション
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